研究概要(2010)
研究課題名
触法・被疑者となった高齢・障害者への支援の研究
研究目的
被疑者となって公判中であったり、犯罪事実が認められたが、不起訴処分や起訴猶予処分となった者及び執行猶予付判決を受けた高齢・障害者の再犯予防や地域生活支援のため国内外の実態調査を行い、有効な支援のあり方を探る。また、地域社会内訓練事業をモデルとして実施し、活用できるしくみづくりを行う。
「触法・被疑者」となる高齢・障害者については、その特性に応じた再犯に対しての矯正・教育等の予備策が不備な状況にある。
一方で、福祉的な支援が必要な「触法・被疑者」について、法律職と保健・医療等、福祉職が連携した「良質かつ適切」な弁護活動が不充分であり、対象者について不利益な状況を生んでいるという指摘もある。
司法制度改革に伴い、裁判員制度と被疑者国選制度がスタートし、司法のあり方が大きく変わる中で、「権利擁護」だけでなく、以上のような不充分な側面が大きくクローズアップされる可能性も十分あり、これに対する迅速かつ適切な対応が集眉の急となっている。
精神障害者に対しては医療観察法が制定されており、刑法による保安処分が俎上に上がることがあるが、これらの制度との区別を明確にしながら、犯罪不安社会における再犯防止の観点からも、福祉的支援の仕組みが確立することが必要とされている。
また、「触法・被疑者」となる高齢・障害者の実情や実態が把握できていないため、具体的な施策の確立までに至っていない。わが国においては未だ十分な研究がなされておらず、この実態を明らかにすることが、本研究の特色・独創的な点となる。
研究期間においては、国内外の実態調査を行い有効な支援のあり方を明らかにすると共に、前記の課題点への施策として、不起訴処分・起訴猶予処分になった対象者への矯正・教育を行う「地域社会内訓練」を全国5か所でモデル事業を実施する。また対象者を担当する弁護士を支援するための「被疑者国選弁護人へのサポート事業」をモデル事業として全国5か所で実施し、福祉的な支援にむけての仕組みづくりを行う。
そしてこれらの成果を踏まえ分析を行い、司法・警察両分野との連携を踏まえて、福祉サイドにおける支援策の枠組みを明らかにし、高齢・障害者の再犯を防ぐことに寄与するものである。
・「地域社会内訓練事業(仮称)」のモデル事業の実施

・被疑者国選弁護人へのサポート事業

研究事業予定期間
平成21年4月1日から平成24年3月31日
研究組織
・研究代表者
田島良昭(社会福祉法人南高愛隣会・理事長) 研究の総括
・研究代表者補佐
松村真美(社会福祉法人南高愛隣会・常務理事) 触法・被疑者(高齢・障がい者)の福祉支援に関する研究
・研究分担者
藤本哲也(中央大学法学部・教授) 刑事法学における現状調査研究・分析
荒中(荒・大橋法律事務所) 弁護活動と福祉の連携に関する研究
浜井浩一(龍谷大学法科大学院・教授) 法務と福祉の接点である更生保護に関する研究
小林繁市(社会福祉法人 北海道社会福祉事業団 太陽の園・総合施設長) 福祉施設の支援の現状調査研究・分析
研究の概要

期待される成果
実刑には至らないものの犯罪事実が認められるいわゆる「反社会的行動」については、福祉の現場においてもそのような機能・制度の必要が指摘されてきた。
実際に高齢者・障害者の弁護に携わる弁護士からは、福祉的な支援が必要であり、通常の矯正・教育の中では効果的な改善更生が期待できないにも関わらず、実刑の判決を受ける者が多いこと。また、福祉的な支援体制が認められた際に、不起訴処分や起訴猶予処分となった事例が報告されている。
援護を必要とする高齢・障害者にとって、矯正施設に入所するに至らない段階で、その援護を念頭においた更生の支援を得ることは、人生の質(QOL)を高めることであり、まさに福祉の役割が発揮されることである。
その点において、法律職と保健・医療職等、福祉職との連携によって「良質かつ適切」な弁護体制と、再犯防止を担う「地域社会内訓練」によって、「触法・被疑者」となる高齢・障害者についての支援体制を確立することは、福祉の本来の役割として期待される。
また犯罪不安社会と称される中において、複雑で多様な問題を抱える高齢・障害者の再犯を防ぐことは、犯罪総体の抑制に繋がることが明白であり、社会的成果として期待されるものである。
|