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罪を犯した障がい者の地域生活移行に関する研究  
罪を犯した障がい者受け入れ対象者決定までの流れ(酒井グループ)
酒井龍彦分担研究者のグループでは、「現行制度における虞犯・触法等の障害者の就労と地域生活の現状と課題」をテーマに研究を行っている。
 
最も力を入れて取り組んだのは、罪を犯した障害者を実際に受け入れるための実践的なモデル事業への取り組みである。麓刑務所(鳥栖市)及び中津少年学院(中津市)との研究計画を作成し、矯正局と保護局と社会福祉法人南高愛隣会との受け入れに向けての連携会議の開催、更に受け入れるための実践方法フォローチャートを作成した。
1. 準備期間
2. 対象者受け入れ検討
3. 受け入れに向けた取り組み
4. 受け入れ
1. 準備期間
施設見学実施(平成18年7月~9月)
近隣の矯正施設及び矯正施設を出所した後、知的障がいがあると思われる人たちが生活しているのではないかと思われる施設の見学を行う。
 
矯正施設) 麓刑務所(佐賀県鳥栖市)、長崎刑務所(長崎県諌早市)、 北九州医療刑務所(福岡県北九州市)、中津少年学院(大分県中津市)、筑紫少女苑(福岡県福岡市)
更生保護施設) 佐世保白雲(長崎県佐世保市)、長崎啓成会(長崎県長崎市)、 ウィズ広島(広島県広島市)
救護施設) みどり荘、あいこう園(長崎県長崎市)、あじさい、八天荘(長崎県佐世保市) 婦人保護施設) 清和寮(長崎県長崎市)
  
見学後、矯正局と保護局と福祉施設の連携方法について方策を模索するため、中でも知的障がい者(児)の入所割合の高い麓刑務所と中津少年学院と連携し、研究実践を行うこととなる。 モデル事業を実践する上で法務省と協議しながら研究計画書を作成し、個人情報の取扱いを含めた合意書を麓刑務所、中津少年学院と社会福祉法人南高愛隣会の間で取り交わす。
法務省矯正局、保護局との協議(平成18年11月22日)
場所:法務省保護局会議室
 
矯正施設から罪を犯した障がい者を福祉施設へ受け入れる際の流れについて協議を行う。
 
受け入れ対象者の選定については、矯正施設、保護観察所、福祉事業所で最初から共同して進めていく。その際、矯正施設からは可能な限りの情報提供が可能。 第1回合同支援会議にて矯正施設より対象者を挙げていただく。その後の流れはフローチャートを作成し、それに基づき進めていくこととする。(フローチャートは別紙1参照)
福祉事業所は本人の受刑中から、本人のケースを知るために面談に入ってはどうか。
矯正施設、保護観察所も本人の受け入れ先である福祉事業所を知ることで、対象者の選定の参考になると思われるため、一度福祉事業所を見学することとする。(合同支援会議準備会)
合同支援会議準備会(平成18年12月20日)
場所:長崎能力開発センター 大会議室
 
参加者: 矯正局関係) 麓刑務所 瀬口統括、星野看守部長、
津少年学院 福田統括、平岡専門官、
法務省矯正局成人矯正課 脇本専門官
福岡矯正管区 重田医療分類課長
財団法人矯正協会附属中央研究所 北村主任研究員
  保護局関係) 更生保護法人日本更生保護協会 清水常務理事(分担研究者)
更生保護法人清心寮 藤本常務理事
法務省保護局観察課仮釈放係 大日向係長
九州地方更生保護委員会 河野更生保護調査官
長崎保護観察所 小西所長、藤澤保護監察官
  南高愛隣会) (主任研究者)田島理事長
(分担研究者)酒井常務
(研究協力者)松村常務、峯友常務、阿部専務、吉本班長、
(事務局)釣船部長 
今後の受け入れ先のイメージをつかむために、南高愛隣会の各施設及び長崎能力開発センターを見学していただく。
矯正、保護、福祉が同じテーブルに会することは今までになかったことであり、画期的な会議であった。
今後のモデル事業を実践する上で、実際に連携する各機関が集まり、お互いが不安に感じているところなども話し合う機会となり共通認識を持つことが出来た。
2. 対象者受け入れ検討
第1回合同支援会議(平成19年2月26日)
場所: 麓刑務所(佐賀県鳥栖市)
 
参加者: 麓刑務所) 空閑所長、下西処遇部長、瀬口分類統括、星野分類保護係
  九州地方更生保護委員会) 河野更生保護調査官
  長崎保護観察所) 星田更生保護振興課長
  南高愛隣会) 田島理事長、酒井常務、松村常務、伊藤科長、岡﨑科長、吉本班長 計10名
麓刑務所所内見学
場所: 麓刑務所(佐賀県鳥栖市)
 
麓刑務所より支援対象者候補を23名挙げていただく。対象として候補に挙げられた方の基準は、平成19年度中に仮釈放が設定出来そうな人及び満期を迎える人の中でIQ相当値が70以下の人であった。
麓刑務所側から支援が必要と思われる人を候補者の中から挙げていただき、それを参考に法人内部で面接の候補者を検討することとする。その後候補者の方へ麓刑務所より施設での訓練について簡単に説明していただき本人に面接を受けるかどうかの意思確認をしていただくこととする。
受入れ対象者検討会議(平成19年3月6日)
場所: 県央地域サービスセンター会議室
 
参加者: 酒井常務、松村常務、伊藤科長、岡﨑科長、吉本班長  
第1回合同支援会議でいただいた資料を基に一人一人を検証していく。その際、帰住先がはっきり決まっており子どもがおられる人は対象外とした。
その結果15名の方を面接の候補とし、麓刑務所瀬口分類統括へ連絡する。
受入れ対象者との面接(平成19年3月15日)
場所: 麓刑務所 会議室
 
参加者: 酒井常務、松村常務、副山部長、岡﨑科長、吉本班長  
こちらが面接候補として挙げた15名に話をしていただいた結果、9名の方に面接を受入れていただく。そのうち4名の方が支援に対して積極的に関心を示されていた。
麓刑務所側からは、質問の内容に制限はなく何でも聞いて下さいとのことであったので、あらかじめ質問項目を設定し面接に望んだ。
面接の結果、4名の方が支援を受けてみたいとのこと。
受入れ対象者内定会議(平成19年3月16日)
面接の状況と麓刑務所からの支援対象者リストを基に、受入れ対象者として、初めから支援に積極的に関心を示していたI氏・M氏・E氏の3名を決定する。K氏・Y氏については、本人が地元での生活を希望したこと、再犯の恐れが高いことからそれぞれの地元の福祉機関へつなぐ対象とする。
麓刑務所、法務省へ対象者決定の連絡を行い、受入れに向け共通の認識に立つこととする。
受入れ内定者については、別紙2参照
第2回合同支援会議(平成19年3月23日)
場 所: 麓刑務所(佐賀県鳥栖市)
 
参加者: 麓刑務所 所長、処遇部長、分類統括
九州地方更生保護委員会 保護観察官
長崎保護観察所 課長
南高愛隣会 酒井、松村、副山、岡﨑
 
南高愛隣会より、3月15日の面接及び3月16日の受入れ調整会議にてモデル事業の対象者(社会福祉法人南高愛隣会にて受け入れる方3名、本人の希望する地元での支援へ橋渡しをする方2名)を決定した旨報告する。対象者へは本会議後伝え、意思確認を行う。その後、南高愛隣会で受入れる対象者については自分たちで家族へ手紙を書いて報告する事となる。家族への対応についても全体で統一を図る。
引受人の調整及び仮釈放申請及び仮釈放期日の設定について保護観察所より説明を受ける。
福祉サービスを受けるまでの手続きについて、南高愛隣会より説明行う。療育手帳、障害基礎年金、福祉サービス利用申請は対象者が受刑中に行えるよう協議を行い、前向きに検討していただく。
個別プロフィールの作成
援護の実施者である市町村へ送付するための個別プロフィールを作成し、麓刑務所へ郵送。確認していただく。(後日、法務省と協議され麓刑務所で新たに作成された個人プロフィールと、法人が支援にあたり必要な個人情報とを郵送していただいた。)
3 受け入れに向けた取り組み
療育手帳取得に向けた取り組み
○ 長崎こども・女性・障害者支援センター、知的障害者構成相談所への問い合わせ(平成19年4月11日)
療育手帳の新規申請について、長崎こども・女性・障害者支援センター及びK氏出身県知的障害者更生相談所に問い合わせ。どちらも申請には18歳までに知的に障がいがあったと推認される資料が必要との見解。
 
○ ○○市役所への問い合わせ(平成19年4月12日)
翌日返答あり。内容は以下の通り。
 
上司と検討した結果、○○市に住民票があるとは言え、本人がまだ戻ってきていないのであれば、事前の支援は何も出来ない。
戻られた時にこちらで出来る支援は、療育手帳の取得案内と、自宅が無いということなので、障害福祉課の担当ではなく生活福祉課への案内(生活保護)程度である。
入所支援を利用したいということであっても、療育手帳が無いと出来ない。年齢が56歳ということで、療育手帳が取得できるかもわからない状況での支援はない。
対象者についての資料を送られるということであったが、資料を送られても現段階で市役所としては期待に沿える支援は出来ない。しかし資料は送ってもらっても構わない。
 
○ 本人の出身校(小学校・中学校)への問い合わせ
対象者の成績に関する資料が残っていないか問い合わせるが、保管期間は25年ということで残っていなかった。
○ 本籍地周辺の調査(平成19年4月25日)
○○市役所障害福祉課、○○県知的障害者更生相談所、○○市障害者地域生活支援センター及び対象者の本籍地周辺を訪問し、今後の支援について、何らかの手立て、方策がないか相談、協議を行う。
 
○○市としては、福祉サービスを受けるには障がいがあるという証明になる何かしらの手帳が必要との考え。療育手帳の取得が現段階で難しいのであれば、精神障害者保健福祉手帳を取得し精神障がいのサービスを受けてはどうかとのアドバイスをいただく。その場合、対象者本人の特性を知るためにも直接施設入所ではなくまずは精神科への入院が適当との話が出る。その場で病院へ連絡を取られ、出所後直接病院へ来てよいとの返事をいただく。本人の意思確認必要。
○○県知的障害者更生相談所へ研究の概要及び、対象者のような方が療育手帳を取得するにはどうすればよいかをご相談するが、療育手帳申請の窓口は市役所であるとの見解であった。
生活支援センターにおいては、本研究の主旨及び本人の現在おかれている状況等説明し、市に住民票があるのであれば、ぜひ協力させていただきたいと言っていただく。
 
○ 法務省への問い合わせ
法務省へも本人が療育手帳を取得するために何らかの方策が無いか相談する。その後、法務省保護局より地元保護観察所の協力をいただけることとなる。その後、地元保護観察所で調査をしていただくが、本人の幼少期を証明出来る人物はいないとのことであった。また、個人情報保護の観点から本人の前歴や状況を出してまでの調査は出来ないとのこと。そこまで情報を出せば、知っている人もいるかもしれないが現状としては難しいとのことであった。
 
○ ○○県知的障がい者入所施設への問い合わせ(平成19年5月1日)
施設自体に空きが無く、定員外で受入れたとしても入所調整システムが働き、県が介入してくると思われるため、現段階での受入れは難しいとのこと。
 
○ ○○市からの回答(平成19年5月7日)
○○市へ松村より連絡。今回は療育手帳及び福祉サービス申請等に関する準備が整わなかったため、一旦は南高愛隣会で引き受けるが、精神障害者保健福祉手帳は○○市に申請し、ゆくゆくは本人の希望である○○市へ移行したい旨をお伝えする。また、療育手帳については申請のための確たる証明が整い次第申請すること、援護の実施については○○市が行うことで同意となる。
 
○ 療育手帳の申請(平成19年5月9日)
麓刑務所の指定医より診断を受け、診断書を作成していただき、精神障害保健福祉手帳の申請を麓刑務所より○○市へ行う。同日、南高愛隣会生活介護事業所担当者が本人と面会し、今後の意向を伺う。
受け入れ会議の実施
平成19年5月10日 受入調整会議実施。K氏受入に際し、カリキュラムの作成を行う。また、麓刑務所と電話にて本人出所についての打ち合わせを行う。
平成19年5月11日 第3回合同支援会議後、本人と面接実施。
4. 受け入れ
平成19年5月14日 刑終了のため出所。
南高愛隣会日中担当者、生活担当者で麓刑務所へ本人の受入に出向く。
本人の日用品、衣類等麓刑務所職員の方のご好意で揃えていただく。
満期出所のため、緊急更生保護が受けられる保護カードを支給される。
南高愛隣会田島(理事長)、松村と面談実施。
ケアホームにて荷物の整理、及び聞き取り実施。
平成19年5月15日より南高愛隣会の支援を受けられている。
平成19年6月6日 本人と○○市訪問。
生家周辺において親族に偶然お会いすることが出来、療育手帳に必要な証言を得る。
○○市役所訪問、協議・・・発達期の証明が出来ることで療育手帳の申請を受理される。また、援護の実施者は○○市で決定する。
支援センターへ、今までのお礼と経過説明に伺う。
平成19年6月14日 雲仙市ヘ生活保護申請の相談を行う
平成19年7月9日 本人と○○市訪問
生家周辺において親族に偶然お会いすることが出来、療育手帳に必要な証言を得る。
○○県知的障害者更生相談所へ療育手帳判定に行く。(長崎県への判定の委託はされず)
○○市役所にて福祉サービスの申請を行い、その場で障害認定区分の聞き取り調査実施。
平成19年7月26日
福祉サービス申請のための医師の意見書作成のため長崎県の精神科受診。
生活保護支給決定。療育手帳取得後、障害者加算がつく。
平成19年8月8日 療育手帳取得のための嘱託医診断(○○県知的障害者更生相談所にて)
平成19年8月9日 療育手帳の取得
療育手帳交付 判定:B1
福祉サービス支給決定 区分3(5/16~8/8:福祉サービスは法人負担)
住民票は援護の実施者が決定した時点で○○市から雲仙市へ編入。
現在は日中を生活介護事業所、生活を共同生活介護事業所においてサービス利用中。同じ過ちを繰り返さないように、本人の身の回りからアルコール、火気類を一切排除している。9月より障がいの重い方の多いホームへ移動。24時間の支援体制のもと、本人と他のメンバーとの関係調整を行い、現在安定している。しかし、職員がいるから悪いことは出来ないという意識があるようで、単独での行動は設定出来ない。常にマンツーマンでの支援を要す状況。
 
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