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理事長室からの提言
第7回 触法障害者の自立支援について
2010.04.01 更新

平成21年7月から各都道府県にて「地域生活定着支援センター」(以下、定着支援センターという。)の設置が始動している。同センターは平成18~20年に行われた厚生労働科学研究「罪を犯した障がい者の地域生活支援に関する研究」提言を踏まえたもので、矯正施設の障害者・高齢者が安定した地域生活を営めるよう福祉的支援を行う役割を担う機関である。
同研究班で研究代表者を務め、前身の「契約になじまない障害者等(触法・ぐ犯障害者等)の法的整備のあり方勉強会」の立ち上げからこの問題にかかわってきた者として、やっと制度化までたどり着いたという思いがある。その一方で、研究を進める過程で新たな課題が次々と明らかになっている。
本稿では、これまでの定着支援センターのモデル的実践を振り返るとともに、実践を通じて明らかになった課題点についてまとめる。

1 問題の所存

厚生労働科学研究では、平成18年に法務省の協力により全国15庁の大規模刑務所を対象に調査を行った。27,024人の受刑者の中で知的障害(疑いを含む。)のある人は410人(1.5%)いることが判明した。そのうち、福祉へのパスポートといえる療育手帳の取得者はわずか26人(6.3%)にとどまっている。最も多い罪名は「窃盗」で43.4%、無銭飲食、無賃乗車等も含む「詐欺」が6.8%、「放火」が6.3%と続いている。80.7%が無職、学歴は中学校以下が86.1%となっている。犯罪動機としては「困窮・生活苦」が36.8%で最多となっている。
大きな特徴としては出所事由である。前刑データによると仮釈放は20.0%、80.0%が満期出所である。平成18年の出所受刑者総数30,600人のうちの仮釈放52.6%(16,081人)と比べると大きな差がある。仮釈放には身元引受人と帰住地が必要であるが、43.5%の帰住先が「未定・不詳」であり、3か月未満での再犯が32.3%、1年未満での再犯が60%となっている。出所後の福祉支援がないゆえに、負のスパイラル(連鎖)に陥り犯罪を繰り返す「累犯障害者」を生んでいることが明らかになった。

また、『矯正統計年報』によれば、知的障害とされる「知能指数69以下」の受刑者は毎年の新規受刑者の2割強を占めている。自閉症や発達障害等を勘案し「知能指数79以下」とテスト不能を含めると、約半分が知的障害、精神障害、認知症等何らかの障害を有している可能性(グレーゾーン)がうかがわれる。平成20年の新規受刑者28,963人のうち、知能指数79以下の受刑者は46.4%の13,429人であった。
『矯正統計年報』と研究班の調査の比較から、福祉の支援の網(セーフティネット)からもれている潜在的な障害者が多くいるという課題も浮かび上がってきた。

2 定着支援センターの設置まで

これまで司法サイド(矯正・更生保護)と福祉サイドの間では、福祉の支援を必要とする受刑者等に対する情報提供・連携が全くなされていなかった。その結果、障害を有していたり、高齢であるなど最も生きる力が弱い出所者は、社会で居場所を見つけられずに罪を繰り返し、「矯正施設」という「最後のセーフティネット」に居場所を求めるしかなかった。このように司法サイドと福祉サイドの連携(情報)不足が「累犯障害者」を生み出す一因となっていたと言っても過言ではない。
厚生労働科学研究では矯正施設と福祉事業所との連携のあり方を探るモデル事業を実施した。矯正施設と福祉とが一堂に会し知的障害を有する受刑者の処遇について検討する「合同支援会議」を開催し、2か所の矯正施設から8人をコロニー雲仙で受け入れ、2人を出身地の福祉機関へつないだ。
このモデル事業の成果に基づき、司法と福祉をつなぐ架け橋となる機関(機能)の必要性を政策提言し「定着支援センター」の設立に至った。


 
 
   
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