本日はようこそ「福祉のトップ・セミナー in 雲仙」においでいただきました。社会福祉法人南高愛隣会は、昭
和52年10月6日、雲仙愛隣牧場の開設をもって始まりました。今日で丁度30年を迎えます。
昨日、皆さんにご覧いただいかと思いますが、各施設の前に3本ポールが立っていて、真ん中に国旗が、
横に社会福祉法人旗が揚げられており、もう一本横がぽんと空いていたと思います。
今年3月31日、長年の願いであった入所型授産施設「雲仙愛隣牧場」と入所型更生施設「コロニー雲仙更生
寮」を廃園いたしました。すなわちそれまでは、そのポールに雲仙愛隣牧場、あるいは更生寮の二つの施設
旗が立っていたわけです。
閉園式には施設を利用して今は社会自立をした人達にたくさん出席してもらいました。式の後に「ここが無く
なるんだよ」と話すと、「この施設がなくなってよかった」とすごく喜んでくれました。施設があるということは社
会に巣立っていった人達も、いつこの施設に戻されるか、帰れと言われるかという不安がどこかにあったんで
しょうね。その話をしながら、いかにこの施設が嫌われていたか良くわかりました。
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私は雲仙愛隣牧場が開場した時に、六畳一間の調理士の控え室に、家内と三歳になる息子と一緒に住み
込みました。その後、福祉ホーム「有明荘」に家内が管理人となり私が居候という形での生活を25年続けてき
ました。施設の中での利用者と一緒の生活は、本当に言葉に表せないほど大変なものでした。私は責任者と
してその生活を送っていたわけですが、色々な障がいを持つゆえに、故郷や親から引き離れて生活する人は
とてもつらくて大変なことだったと思います。
入所施設の是非をめぐっては色々な議論がいまだにされています。しかし、あの鉄筋コンクリートに自分自
身で住み込んで、入所型施設がどんなものかを自分で体験した人は少なく、そういうのを抜きにして行われた
のが、これまでの入所型施設をめぐる議論だったのではないでしょうか。
その意味では、コロニー雲仙の30年で取り組んできた「ふつうの場所で、ふつうの生活を」という理念は、よ
り豊かにより幸せな生活をするには、入所施設という特別な場所での特別な生活ではなく、地域の中で普通
に生活する仕組みを作るのがよいのではないか、という理念は自分自身のそういう大変な生活の中から生ま
れたものです。
利用者一人一人の幸せはどうやったら出来るだろうか、ずいぶん悩みましたが利用者のみなさんから教え
ていただきました。
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そうして実践したものは、当時の厚生省、労働省、文部省と連携し、法律や法改正に生かしてまいりました。
平成8年から10年近くは、浅野史郎・宮城県前知事とペアを組んで、宮城県から色々な発信をしてきましたが、
原型はいずれもコロニー雲仙での実践です。
昭和53年の施設開園以来、テーマを決めて五ヶ年整備計画を立ててきました。その中でも昭和58年から
昭和62年にかけての、第二次整備計画「社会自立へのシステムづくり」での実践が、今回の障害者自立支援
法の中身と似ています。ある意味では今回の障害者自立支援法は私達の30年間の活動の集大成とも言えま
す。
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そうした実践の中では比較的うまくいった部分もあります。例えば、強度行動障がいや重度高齢でだんだん
処遇が困難になっていく人については、社会的に関心を持っていただきましたし、相当手厚く支える仕組みを
作っていただきました。
反対に今なお手こずっているのは、障がい程度が軽い人の処遇です。あっという間に飛び出してどこかへ
行ってしまって反社会的な行動を起こす、「境界線児」と呼ばれる人については、学校教育でも家庭教育でもう
まくいっていない人が沢山います。何らかのハンディキャップを持っているにも関わらず、年金ももらえない、
色々なサービスも受けずらい。この施設の周辺に残ってしまっているのは、そういう能力が高いにも関わらず、
色々な反社会的行動があるという人達です。
「脱施設」を掲げる流れは全国でも起こっています。しかし、全国の福祉事業団を見ても実情は非常に中途
半端な改革というのがほとんどです。私は平成14年に宮城県の船形コロニーの施設解体宣言をし、1年半遅
れて浅野知事が「みやぎ県知的障害者施設解体宣言」を出しました。実は宮城県では、平成10年にはその原
型ともいえる、定員500人の施設を150人にして、350人を外に出すという内容の「脱施設宣言」をしています。
現在の「脱施設」の動きとは、平成10年の「脱施設宣言」の域を脱していません。すなわち、軽い人は社会へ
就労へと送り出し、重い人は手厚く保護を受けるという、全日本育成会が主導行った昭和40年代の運動のま
まなんですね。これは明らかに間違いであったと思います。どこが間違いかというと、重い障がいがある人は
あの施設の中でいまのままでいいんですか? 障がいが重ければ一生あの施設の中で飼い殺しになるよう
な状態で良いのですか? ということです。
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「ふつうの場所で、ふつうの生活を」ということを望み、実現している人達は現実に沢山います。夢トークで
話される、横浜の「訪問の家」の日浦美智江先生の所では、重い重症心身障害者の人達が、現実に地域の中
で支えられて生活しています。
障害者自立支援法については色々な考え方はあります。しかし、向かっていく方向は間違っていません。ど
んな障がいがある人も、重い人でも軽い人でも、ふつうの場所でふつうの生活を安心して出来る仕組みをしっ
かり考えていく。そこに人とお金をつぎ込んで、どんなに障害のある人も、地域の中で支えていける仕組みを
作っていくことは可能だと考えます。
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今年4月1日の時点で1,326名、実質的には約1,100名が、コロニー雲仙の福祉サービスを利用していま
す。その中には11名の処遇が困難な強度行動障害の人も地域での生活に切り替わっています。私どもが目
指しているものまだ道半ばです。しかし、30年という月日はかかりましたが、入所型施設に頼らずに、地域の
中で支える仕組みをやっと整えることが出来たという思いがあります。
本日は本当に遠くから暑い中、この長崎に来て下さりました。是非皆様のご意見を聞かせていただき、最後
に政策提言を行う「長崎アピール」についても御検討いただきたいと思います。
このセミナーにご出席いただき本当にありがとうございました。
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