社会福祉法人 南高愛隣会 コロニー雲仙
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入所施設から地域移行の手引き ~地域で支える新たな生活支援~  
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以上4人のところをあげて駆け足でお話をしましたが、事業者と利用者にとって、どういう点がメリットだったのか、デメリットだったのかということを簡単にまとめてみます。
事業者のメリットとしては、措置費から支援費に変わった時の収入の増加です。その頃は判定の仕組みが確かなものでなかったため、申請者の要望が通りやすく中度軽度の障がい者もA判定を受けたり、グループホームにおいても同様の状況が起きました。A判定の人を沢山抱えると財政的に逆に施設は豊かになったという実態がありました。これを利用者のためにどのように使ったのかというのが最大の課題ではなかろうかと思います。
2つ目は、自立支援法の生活介護事業所で定員20人以下の事業所は、給付単価が増えて運営がしやすくなっております。これは事業者のメリットではありますが、この運営しやすくなった部分を利用者のためにどのように使っているのかというところを同じように自分自身に問いかけて改善が必要かと思います。
また、就労継続系(A・B)支援事業は福祉工場の時から比べると施設的な色彩は濃くなったんですが、職員配置がきちんと出来る様になりましたし、給付によって運営もしやすくなっております。そういった意味で工賃アップや一般就労に、きちんとつなげていけられるかという今後の課題があげられるかと思います。

逆にデメリットとしては、初日在籍で支給されていた措置費が日割り形式になったことで、人気の無い事業所は収入減になり運営がしづらくなったことが顕著になってきています。ただし、人気のあるメニューがあり、サービスの質の高い事業所というものは必ず利用者が利用しますので、逆に運営はしやすくなるという構図にあります。それから年金を持たないような人の生活諸経費は施設が徴収しますが、未回収のところもあったりして少し苦慮している事業所もあると言えます。

次に利用者のメリットです。 自立支援法により職住分離がなされ、日中系、居住系サービスが密な支援を提供することが出来るようになって、いいサービスを受けることが可能になりました。個別のニーズによりサービスメニューが日替わりで使えるようになり、使った分だけサービス使用料を払えば良くなったことで、非常に使い勝手がいいものになったかと思います。 利用者中心の個別支援が充実すると本人達の希望や願いが叶いやすくなってきます。また、サービスの質が問われるようになって、より良いサービスが受けられるようになります。この利用者のメリットというのがやはり本人達にとって最大の嬉しい事ではないでしょうか。

逆に利用者のデメリットということでは、使いたいサービスが近隣になかった場合には遠くまで行かなくてはいけない。近くにあるニーズに合わない事業所を使わざるを得ないという状況がまだ残っているかと思います。 また、生活介護事業所は重度の人達の活動の場として展開するようになりましたので、軽度の人達との交流が持ちづらくなったという難点があります。しかしながら会社に勤めているような人達でも楽しいレクレーションメニューがあると、休みの日に生活介護事業所を利用しようかなということもあります。1日150%まで活用可能になっておりますので、この辺を創意工夫しながら事業を組み立てていくことが肝要になっていくかと思われます。 日常諸経費の負担は、確かに費用が大きくて苦しい人もいます。その中でどのように経費を減らしていけれるかは、公営住宅の活用による住宅費用の軽減というところが今後大きな課題として抱えているかと思います。
これらの分析というのはあくまでもコロニー雲仙の入所施設から地域移行を進めるときの実践を通しての部分的な分析であります。しかしながら一つ一つを細かく見ていくと自立支援法は一般的に悪法と言われていますが、利用者にとってより良い制度になっていないと果たして言えるのでしょうか。「不満でたまらない」「入所施設のところの50人のところにまた戻して下さい」という方は、少なくとも我々が入所施設から地域移行した利用者やそのご家族からは一人も現れておりません。どうしたらより良い制度になっていくかということは今後も走りながら考えて、事業所ありきの発想から利用者にとってどうなのかという視点で考え直す、良い転換期にあるのではないかなと思っております。
4. 事例を通して考える <更なる制度の充実を>
サービス格差の是正であったり、公営住宅の使用をめぐって各市町村となかなか上手くいっていないという事態があったり、それから子育て支援を今進めておりますけれども、なかなか支援の手立てが成り立っていなかったり、高齢になった障がい者の介護保険との併用について等まだまだ課題が残るところもあります。これらについては是非とも行政の皆さんに、一緒に考えていただきたいと思います。
 
5. 愛する人との暮らしを

「愛する人」とは色んな形態があると思います。同性同士で仲の良い友人もあるでしょうし、親子の関係もあると思います。その中でも我々の周辺で一番本人達が望んでいることは恋人を持つこと、結婚をすること。そういう夢に向かって希望を抱いている青年達がたくさんおられます。
我々は2004年の入所授産施設解体と同時に、もっと細かく本人達が夢を描けるようなものにしていこうよということでグループホームの解体宣言も行っております。この時に「結婚推進室ぶ~け」というものが同時に作られております。
 

「ぶ~け」は出会いの場を作ったり結婚だとかパートナー生活(同棲)とか、そういう次なるステップを後押しをするようなソフト的な事業です。必ずしも結婚や入籍することだけにとらわれず、人生の中の今をどう愛する人と幸せに暮らすかと考え、柔軟に対応していこうとしております。とてもおせっかいな世話人さんたちにぴったりの支援内容です。
「ぶ~け」に今登録されてる方は124名、今までゴールしたカップルが25組です。「ぶ~け」はくっつけるところまでで終わりなんですが、新生活がスタートしてしばらくの間は担当の世話人さんに助言をしたりして活躍をしています。グループホームケアホームが2人から適用できるようになって、世話人さんの支援も夫婦生活や子育て生活という幅がずいぶん広がってまいりました。地域生活を送る人たちの中では、この愛する人との暮らしというものが大きなうねりを持って広がりつつあります。
愛する人とは単発的にくっついて別れてというものではなくて、長らくその幸せが続くようにという継続的な支援がとても大事だと考えております。ですから「ぶ~け」で出会ってその後に誰がどのように見守って、どのような支援をしていくのかということをきっかり押さえていく必要があります。これが今、私が担当する県南地域サービスセンターの中では非常に大きく必要とされているニーズになっております。手引きにはどのように、夫婦生活のバックアップ支援をしているかというプログラムが載ってありますので、ぜひ参考に見ていただけたらと思います。
今までお話してきたものを地域の中でしっかり作っていこうということで、昨日見学コースにもありましたが、雲仙市の西郷地区というところを「さいごうモデル」として、一つのお手本にしながら進めています。施設からただ単に地域に出てホームで暮らすというだけでは豊かな暮らしとはいえません。そこに住む地域住民といかに交わっていけれるか、そのチャンスをどのようにふんだんに日常的に取り持っていくか、そういう取組みこそが彼等が施設を出て地域に暮らす豊かさにつながっていくものではなかろうかと思います。これが地域密着の底力といいますが、西郷のすばらしいところかと思います。西郷地区にも入所施設が地域移行した時に、重度棟対象の5名が移ってきて、こういう人達に囲まれながら普通の暮らしで満足げに暮らされております。
 

我々は常に利用者の声を中心にサービスを展開していきますので、毎年アンケートをとります。今どんな暮らしをしたいのかという問いに対しては圧倒的に恋人との暮らし、結婚生活という答があがっております。色々な角度で彼等の声を聞きながら今後も進めていきたいと思いますが、事業者の独りよがりであってはなりません。我々が提供しているサービスがこれでいいですか、こんなサービスで本当に良かったですか、ということを常に確かめながら歩いていく必要があるかと思います。
 
6. 最後に
入所施設から地域移行するということは、ふつうの場所でふつうの暮らしを始める為の第一歩にすぎません。自立支援法で示されている日中系、生活系サービスとは、職住分離という極めて当たり前の生活のあり方であり、各種サービスによりとりあえず地域で暮らしていく為の最低限の枠が骨格として整えられただけです。制度上の種々の過不足や問題点、使い勝手の悪さ等は現場からそれらを具体的に上げて、行政と共に改善策を考えて修正していくことが大切です。
自立支援法の理念は素晴らしく、時代が変わろうとも掲げ続けるべき真理がそこにはあります。ではふつうの場所でふつうの暮らしの先に見えてくるものは一体どういうものなんでしょうか。サービスがご本人の声やニーズに徹して寄り添ったものであるかということ。温かなハートを持った支援者達が専門的にそして隣のおばちゃんたちのようにさりげなく地域に根ざした支援を展開し、沢山の人達の出会いやふれあい、助け合いをもたらしているかどうかが問われているのだと思います。単に施設から地域移行すればいいというわけでもないし、またグループホームを二人生活にすればいいなどという簡単なものではありません。大切なのはご本人の人生における希望や目標を一緒に探し続け、実現に向けて支援していくことではないでしょうか。その具現化に向けた取組みの成果が地域移行であり、多様な生活形態であり、愛する人との暮らしでありましょう。私たちは常に多様なニーズに向き合い、使える制度を駆使し、お一人お一人が納得のいく人生を送っていただく為のサービスを彼等に寄り添って作り続けていきたいと思います。
入所施設にいる仲間達が一人でも多く一日も早く地域生活に移行できますようにと願いを込めまして、私の実践報告にさせていただきたいと思います。  
 
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