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トップページ>"社会への発信>特集ページ>田島光浩理事に聞く 精神障がい者支援室が目指すもの
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更生保護施設「雲仙・虹」の取り組み 司法から福祉にバトンをつなぐ

平成22年度より南高愛隣会には「精神障がい者支援室」が設置され、精神科医の田島光浩理事が担当理事に就任した。これまで知的障がい者の支援を行ってきた南高愛隣会がどのような精神障がい者支援を行うのか。田島光浩理事に「精神障がい者支援室」が目指すものを聞いた。(2010年8月24日取材)

利用者と共に過ごす中で

雲仙愛隣牧場の方々と田島理事
家族と共に住み込んだ入所施設「雲仙愛隣牧場」。
左から2人目が田島理事。

「何でこんなにみんな入院しているの?」

精神科医として長崎県に戻ってきた時、田島光浩理事は精神科病院にいる患者で病状が治りながら退院が出来ない「社会的入院」の数の多さに衝撃を受けたという。長崎県は10万人あたりの精神病床数が全国でも2番目に多い県である(2008年10月現在)。ただそれだけが驚いた理由ではない。
田島理事は1978年4月、出来たばかりの入所施設に、父である田島良昭理事長と共に住み込んだ。両親を探すのに大声を出さないといけないという環境で、幼かった田島理事の喉にはポリープが出来た。そんな「ふつうの場所」とはほど遠い環境から、通勤寮、福祉ホームへと利用者が地域へ移ると共にふつうの環境へ移っていった。
その後、医療面から両親の仕事をサポートしようと、志していた剣道の先生から医学部に進路を転進。精神科医の道を選んだ。

田島理事◆ 精神科病院には長期入院の方が多いというのは講義等で聞いてはいました。でも卒業後勤めた病院が大学病院だったことや、私が担当したのが精神科救急医療という急性期の患者さんを中心に受け入れるところだったので、1~2年も入院している患者さんに接することがなかったんですね。
一方で南高愛隣会では施設がバラバラになって、自分が利用者の人達と一緒に地域移行していった様に、グループホームとか地域でどんどん生活するようになっているわけです。それが当然と思っていたのに、何でこんなにみんな入院をしていると衝撃を受けました

精神障がい者が置 かれている現状

図1

戦後、「私宅監置(座敷牢)」からの開放を目指し、総合病院の三分の一という人員配置基準、全額公費負担とする措置入院の「同意入院」への適用、医療金融公庫の創設等の施策によって、民間の精神病院の増設が図られた。1964年には、統合失調症の少年によるライシャワー米国大使が刺される事件が発生。「精神病者を「野放し」にするな」という世間の声にも後押しもされ、精神障がい者の精神科病院の収容が進んでいった。
そうして誕生したのが「治療」も「診察」も精神科病院に入院しなければ受けられないという病院中心のシステムである。 現在、日本の人口一万人あたりの精神病床数は先進国でも断然トップの28床、平均在院日数は320日(2006年)。「社会的入院」は7万人いると言われている。

田島理事◆ 精神科病院は必要ないとは思いません。一つは精神疾患の症状が出た初期の段階で、それが統合失調症なのかてんかんの重積なのか脳炎なのかということを、短時間でも入院してルールアウトする必要があります。もう一つは暴力を伴う精神興奮状態の場合には、現在の私達のスキルでは一旦は病院の力が必要な場合もあります。
ただ、今はあまりに病院に頼りすぎているところがあるのではないのでしょうか?。
父が南高愛隣会の利用者に聞いた様に、私も患者さんに「これからどうしていきたいですか?」と聞きました。「おうちに帰りたい」「お弁当を持って働きに出たい」という南高愛隣会の利用者さんの答とは違って、「どんなことをしたいと言われても困ります。別に何もないです。この生活が幸せです」というのが患者さんの答でした。診察の時に「調子はどうですか」と聞きますが、10年も入院して調子が変わることも少なく、そういう答になってしまうのは仕方ないのかな…

南高愛隣会が目指すもの

南高愛隣会が目指すのは「精神障がい者の方も、病院ではなくふつうの場所でふつうの暮らしを安心して出来る体制作り」だと語る。
その中心となるのが、医師、看護師、保健師、作業療法士(OT)、精神保健福祉士(PSW)等という多職種のチームで構成される「訪問看護ステーション」を中心としたアウトリーチのできる地域精神科医療チーム(平成23年度設置予定)だ。

田島理事◆ 訪問の重要性を実感したのは患者さんの退院に関わったことからです。 私は3年間で9人の患者さんを退院させました。そこで一番苦労したのが家族の説得です。一番悪い状態を見ている家族からは心配して、「悪くなったら病院が診に来てくれるんですか?」と聞かれます。でも「それは出来ません。家族が連れてきて下さい」というのが病院としての答なんですね。
地域精神科医療チームでは在宅のお宅へ出向いて診察や、その方の困っていることのお手伝いを行います。これが可能となることで近くの病院に通うか、でなければ入院するかという二つの選択肢しかなかった状況に、精神疾患を発症しても地域の中で治療を受けられるという第三の道が開けます。
なおかつ、医療と福祉が手を組むことで、どういう薬を使えばよいかという医師である私に分かることだけでなく、お風呂に入るにはどういう支援がよいか、どういう社会資源を使えばよいか、こういう身体の使い方をすれば負担がかからないかというそれぞれの得意分野を活かして、その人の生活全体を支えることが可能になります。
勿論「社会的入院」の受け皿となる「福祉」の充実も必要です。退院に向けた訓練を病院の中でしていても、トースターのボタンの位置が違うだけで出来なくなってしまう人がいます。こうした方のために訪問型の自立訓練(生活訓練)事業を設ける必要があります。
このような医療と福祉が連携して地域での精神障がい者を支えるプログラムとしては、アメリカで開発されたACT(Assertive Community Treatment:包括型地域生活支援プログラム)があります。ただし重い精神障がいの方のみが対象となるACTとは違い、南高愛隣会ではもう少し範囲を広げた「地域精神科医療サービス」を考えています

南高愛隣会の目指すもの

「此那に生まれたるの不幸」

「此病を受けたる不幸の外に、此那に生まれたるの不幸」と精神科医・呉秀三が記してから100年。精神障がい者を取りまく現状は何も変わっていないと田島理事は話す。「その現状を改革してゆきたい」と力強く語っていただきました。

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