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福祉のトップセミナー in 雲仙2004 福祉と介護一体探る  
読売新聞 2004年10月7日 より転載
福祉と介護一体探る
年齢や障害の有無にかかわらず、だれもが安心して暮らせる共生社会の実現をテーマにした「福祉のトップセミナーin雲仙」(社会福祉法人 南高愛隣会主催、読売新聞社共催)が9月4,5日、長崎県島原市で開かれた。7人の首長による討論や講演などを通じ、介護保険と障害者福祉の関係や、地方分権の意義について意見を交換。今後の福祉政策への提言として「長崎アピール2004」を採択した。
首長 夢トーク 出席者
岩手県宮古市長 熊坂 義裕 氏
◇新潟県長岡市長 森 民夫 氏
◇千葉県我孫子市長 福島 浩彦 氏
◇山口県柳井市長 河内山 哲郎 氏
◇滋賀県知事 国松 善次 氏
◇佐賀県知事 古川 康 氏
支援費制度
昨年度から始まった身体、知的障害者の福祉制度。従来の「措置制度」では、自治体主導で支援サービスの内容を決めていたが、支援費制度では、障害者が自主的に選ぶことができる。サービス支給に伴う財源は、国と自治体の税で賄われている。

ケアマネジメント
利用者に必要なサービスを見きわめ、効果的に提供できるよう調整すること。介護保険では実態が法律に定められているが、障害福祉では、法による位置づけがない。
福祉と介護
熊坂 支援費制度と介護保険制度は、一緒にできる部分は一緒にすべきだと思う。障害福祉を税金でまかなうのは、なかなか難しい。市町村が障害福祉に責任を持ち、ボトムアップをしていくには、財源を確保する制度が必要だ。
浅野 介護保険の導入で、国民は、高齢者の問題を「明日は我が身」と感じられるようになった。障害者の問題も、今のままでは人ごとだが、介護保険を適応すれば、自分のこととして考えるようになると思う。
福島 我孫子市では、支援費制度が始まる前から、知的障害者や全身性障害者を支える仕組みを整えてきた。しかし、支援費制度が始まると、一生懸命準備した自治体は飛躍的にサービスが伸び、財源が破たんしそうになっている。これは制度の欠陥だ。努力した所が報われるためにも介護保険と支援費制度の財政の共通化が必要だ。
古川 65歳未満で、アルツハイマーになった人と、交通事故などで障害を負った人がいるとして、サービスが必要な点は同じだが、原因によって介護保険の対象になったり、ならなかったりするのはおかしい。また、北欧の国の人口規模なら、払った税金が、どのようなサービスに結びつくか見えやすいが、人口が1億2千万人もいる日本では、見えにくい。その点、保険料は理解が得やすい。
国松 支援費制度でサービスが顕在化し、金が足りなくなった。まず、財源がきちんと確保されるようにすること。税では限界があり、三位一体改革で地方交付税が減らされるのは、はっきりしている。真剣に仕組みを考えるべきだ。
河内山 全国市長会で、介護保険と障害者福祉の問題について、ホットな議論をしている。半分以上の市長が、一緒にすることに慎重だ。国と地方の信頼関係が失われている部分があり、本当にうまくいくのか、不信感を抱いている市長も多い。しっかり議論して、本当に良い制度にしなければならない。
障害者も地域の中に
共生の実現へ
浅野 知的障害者は早くから施設に隔離され、学校も養護学校へ行く。ほとんどの人が、子や孫に知的障害者が生まれることなど考えない。知的障害者のことは“人ごと”の最たるものではないかと感じる。
河内山 共生とは少しずつ我慢し、競争し合って、逃げずに共に生きること。みんな共生が大事だと言いながら、この問題から逃げているのではないか
国松 滋賀県庁の秘書課では、研修生として知的障害者に働いてもらっている。知事室に入る人はだれでも、その姿を目にする。県庁の玄関にも、知的障害者が運営するコーヒーサロンがある。また、県社会福祉事業団が、近江八幡市の古い商家を借り、障害の有無を区別せず、芸術作品を展示するギャラリーを作った。
熊坂 宮古市の中心市街地のデパートに、障害者の相談窓口を作った。同じフロアに子育て支援センターも入れて交流できるようにした。障害者が隣に当たり前にいるようにすることが大切ではないか。
長岡市でも空いたデパートを丸々借りて、子育て支援センター、国際交流センター、市民サービスセンターなど、あらゆる機能を入れた。そこに障害者プラザも入れて、デイサービスなどを行っている。
古川 今年、佐賀県庁の職員録作成は、障害者を雇用しているNPOが受注したが、「初めての仕事で慣れていないので、納期を延ばしてほしい」と言われた。私は、「ちゃんと納期までに作ってほしい」と断った。結局、寝ずに仕事をして納期に間に合わせてくれた。社会科から必要とされるよう、信頼を勝ち取ることも大切ではないか。
分権と地域福祉
古川 特別養護老人ホームをつくる場合、木造の2階建て以上は許されない。国が一律に規制しているためで、自治体や事業者が責任を負うと言っても任せてもらえない。こういう現状を変えなければならない。地方分権の時代は自己責任の時代。自分でものを考え、いいと思うことはやり、思わないことはやらない、という自由を与えてほしい。
福島 我孫子市では、障害を持つ子は、「保育に欠ける」という要件がなくても、保育園に通える。地域の中で色々な子と一緒に育っていけるようにするためだが、この場合、国から負担金は来ない。こういう自由のきかない負担金は廃止されてよかった。まら、市単独の補助金が既得権にならないよう、支出先を3年に一度見直している。補助金は、自分たちの力ではやれないところに出し、自立できるようになればうち切る。こうした発想で、市民と一緒に自立の精神を育てている。
河内山 ある地域で、道路をつくってほしいと言われたので、「重機を貸すから自前でやらないか」と言ったら、1000万円かかるところが100万円で済んだ。自分たちの課題だと思ったら、1000円、1万円を大事に使う。
7月の水害では、地域の底力を感じた。寝たきりの老人がどこにいるか、あそこは独り暮らしだとか、地元の人がよく知っていて、救出の際役立った。避難所では、町内会の人たちが、寝たきりの人の世話をしていた。施設も、小規模なら、利用者同士の人間関係が生かされ、「地域力」が効率よく発揮される。小規模施設を分散配置することが大事ではないか。
福島 我孫子市でも、障害者の地域サービスを支えているのは、大きな法人でなく、20くらいの小規模で地域密着型の市民事業者で、まさに地域の底力を発揮している。こういう事業者と連携してやっていけるのは、国でも県でもなく、市町村だけだと思う。
浅野 地域のありようは、納税者が決めるべきだ。三位一体改革ではなく、「国から補助金が来ない」という言い訳をできなくすることが本質だ。いったん首長に任された税金が、福祉や教育など様々な行政にどう使われるのか、国ではなく、住民が監視役を果たすべきだ。
■基調講演
塩田 幸雄 厚生労働省障害保健福祉部長
日本には、障害を持つ人が人口の約5%、計約659万人いる。だれもが障害を持つ可能性があるという観点から、今後の障害保健福祉のあり方を考えなければならない。
 
まず、障害者が街で普通に暮らすことを支援する。「地域生活支援」を推進していく。この主体を、住民に身近な市町村が担うことは、地方分権の流れに沿うものだ。
 
体制を整備するにあたり、国の財政支援も明確にしつつ、地域福祉を進めることが必要だが、この場合、介護保険の仕組みの活用についても、国民的議論が必要だと思う。三位一体改革の中で、障害を含む福祉分野の補助負担金の移譲が、地方6団体から提案されていることも考えなければならない。
 
介護保険との関係については、厚生労働省として、様々な関係者の合意を得て、年末までに方向性を出すことが求められている。この機会に、障害種別や年齢、疾病などにかかわりなく、だれもが安心して暮らせる普遍的な地域福祉を実現したい。
 
高齢者と共通の介護サービス部分について、介護保険を活用できれば支援費制度は障害者固有の厚みのあるサービスを担えるようになり障害福祉の充実・。強化につながるだろう。
 
もちろん、介護保険の議論の結果にかかわらず、厚生省は障害者施策を強力に推進する。6月に閣議決定された「骨太の方針2004」の中に、初めて、障害者の就労支援や地域生活について、法的整備を含め充実強化を図ることが盛り込まれた。その内容をどう実現するかが、今後の課題である。
 
いずれにせよ、国民の共感を得るよう、障害者の自立支援の観点から、支援費制度をはじめとする障害保険福祉制度を、抜本的に見直す必要がある。
 
たとえば、ケアマネジメントの制度化、客観的なサービス支給決定基準の作成、低所得者に配慮しながらの利用者負担見直しなどが必要だ。地域に開かれ、支援に役立つよう、施設体系も大幅に改める。通所施設は、社会福祉法人以外の多様な主体が運営できるよう規制を緩和する。
 
一方、働く意欲と能力を持っている人が、適正に応じて働けるよう就労支援を充実させる。精神保健福祉の分野も入院医療中心から地域生活中心へ改革を進める。
 
また、高機能自閉症や注意欠損・多動性障害など「発達障害者」の支援も求められている。知的障害者を必ずしも伴わないので、これまで制度の谷間に置かれていたが、早ければ秋の臨時国会にも、超党派の議員立法が提案されると聞いている。乳幼児期から成人期まで、ライフステージに応じて一貫した支援を行うことを定めた画期的な法律だと思う。
 
社会保険審議会障害者部会を中心に、各制度改正について議論し、10月中旬にも、「今後の障害保険福祉のグランドデザイン」を公表、来春、通常国会に関連法の改正案を提出したい。
 
障害福祉に熱心な街は、あらゆる面で輝いているではないか。各地で障害福祉への取り組みが広がり、互いに学び、競い合うことで、地域の再生、ひいては日本の再生につながることを期待したい。
■実践報告
田島 良昭 南高愛隣会理事長
南高愛隣会では、このたび、運営する知的障害者入所授産施設「雲仙愛隣牧場」を解体することにした。知的障害者の入所施設は、我が国の福祉の中で大きな役割を果してきた。だが、管理された集団生活でなく、地域で普通に暮らすという大きな流れの中、その役割は終わりつつあり、むしろ、終わらせる必要があると考えたからだ。
 
施設解体の動きは、宮城県で始まった。私が理事長を務める宮城県福祉事業団は2002年11月、県立船形コロニーの解体を宣言。今年2月には、浅野史郎・宮城県知事が、県南の施設の解体を宣言した。そのご、「施設から地域へ」という議論が、各地で盛んになってきている。だが、それを実現するに仕組みが「支援費制度」では、あまりにも不安定だ。介護保険は施行後、サービス利用が一気に伸びたが、保険という仕組みのおかげで、財源を充当できた。
 
だが支援費制度は、税で賄われており財源に限界がある。にもかかわらず、「サービスを選んで使ってください」と言う。利用が爆発した際、財源の手当てはどうするのか。この問いに、支援費制度施行前の厚生労働省の担当者は、だれも答えられなかった。そして、予想通り、財源不足は初年度百二十億円、今年度も二百億を超えるといわれている。昨年度は、厚生省の担当者が苦労して手当てしたが今年度はどうするのか、現段階で見通しは立っていない。
 
財政的に破たんするような制度のもとで、地域移行を進めるのは難しい。地域で生活するためには、多様な支援サービスが必要となる。質の高い職員を育てるには、身分の安定も不可欠だ。
 
施設から地域へ多くの人が移り、しかも、より豊かに、より幸せに暮らせるようにしなければならない。そのためにも。介護保険の活用を真剣に考える必要があるのではないか。
 
来年、介護保険法が改正されるが、このタイミングを逃すと、さらに五年ほど先延ばしになる。支援費制度のままでは、障害福祉は壊滅的な状態に陥ってしまうのだろう。
長崎アピール2004
支援費制度の問題点を速やかに改善する。
介護保険の見直しでは64歳以下の障害者を対象に組み込む。また、障害福祉でも、ケアマネジメントを制度化する。その際、長時間介護を必要とする人については、特別なニーズに対応するため、きめ細かな配慮が必要。
「施設解体」については、障害者や家族など当事者の意見や地域特性をふまえ、速やかに進める。地域生活に向けたトレーニングの仕組みを整備・拡充する。
障害者の就労支援を進めるため、授産施設などの機能を見直す。
自宅で家族とともに暮らしている障害者には、家族への支援を強化し、将来、住み慣れた地域で自立生活を送れるよう、トレーニングの仕組みを整備・拡充する。
制度の縦割りをやめ、高齢者や障害者などが相乗りできる地域福祉を進める。そのためには、仕組みや基準を標準化、均一化し、利用しやすくする。
 
 
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